applebear's diary

とある情シスで働く女子。ITに興味なかったのに、気づいたらクラウドとかHPCとかなんか、ITど真ん中の世界に飛び込んでます。プライベートでは駆け出しキャリアコンサルタント(JCDA)だったり。ITとかキャリアについていろいろと書き残したいと思います。 ※このブログの記載内容はあくまでも個人的見解によるものです。 所属する組織の見解は含まれず、所属組織とは一切関係ありません。

 『 働くことの意味づけとキャリア自律 』TCCPイブニングレクチャーに参加してきました(その2)

先日時間切れで書ききれなかったレポートのつづき。

その1は

『 働くことの意味づけとキャリア自律 』TCCPイブニングレクチャーに参加してきました(その1) - applebear's diary

を読んでください。

講演内容その2:キャリア自律 - 個人と組織の共生を目指して 

◆講師:堀内 泰利 氏〔慶応義塾大学総合政策学部講師・SFC 研究所上席所員〕

※以下、ネットでみつけた堀内さんについてのリンク

企業領域のキャリアコンサルタントとは特定非営利活動法人 キャリア・コンサルティング協議会のページより)

カウンセリングコースの学生生活 | 筑波大学大学院 生涯発達専攻 カウンセリングコース(講師の堀内さんの学生生活の感想)

◆内容:

<なぜこの研究をはじめたのか>

NECで長年人事を経験。海外や国内の関連会社に出向した経験を持つ。社内でキャリアアドバイザとなったときに、国内のキャリア感(終身雇用)を変えたい、US西海岸(おそらくシリコンバレーあたりのことだと思う)のキャリア感(40、50代でもチャレンジ、生涯キャリアアップの考え方)のようにできないかということを考えていた。

・1990年代半ばからキャリア自律が必要と叫ばれる中、キャリア自律とは何か、キャリア自律するためにはどうすればよいのかを明らかにしたいと思った。

・一方で、会社側からは「社員のキャリア自律を支援する(キャリアカウンセリングなどのキャリア支援をする)ことにメリットがあるのか?」「そんなことをしたら優秀な人材が流出するのでは?」といったネガティブな反応が。

・講師本人としては、上記のようなネガティブな意見・疑問・反応に対してキャリア自律の重要性や支援の必要性を訴えてきたが、いくら言っても理解してくれなかった。→実証的に明らかにするしかないという結論。

・キャリア自律を支援するための実践的な知見を得ることと、経験と理論を備えたキャリア支援のプロフェッショナルを目指した。

・特に組織内キャリアにおける問題点に注目。従来は会社都合に都合のよいキャリアを歩まされてきた。にもかかわらず、事業環境が大きく変化し、雇用慣行(終身雇用・年功序列)が崩壊したとたんに、「エンプロイアビリティ*1」が強調されて、社員は自己責任でキャリア自律を促され始める。

・そもそも「キャリア自律」とはなにか?それを促進する要因や、与える影響についてが明らかになっていない。

<研究の紹介>

 ・従来のキャリア研究→組織内で長期的、安定的に形成されるキャリアの研究が中心→組織主導によるキャリア形成(組織から与えられた役割を果たすなかで形成する)

・伝統的キャリアの理論的ベースとなっているもの(それぞれの理論は以下URLを参考にしてください)

*スーパーのキャリアステージ理論

エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門(2):スーパー理論でキャリアの全体像を考えよう (1/2) - @IT

*シャインのキャリア・サイクル・モデル

【発達的アプローチ:G】シャインのキャリア理論�@(キャリア・サイクル・モデル): 豊かなキャリアの歩み方 研究所

*ホールのキャリア・ステージ・モデル

・日本におけるキャリア研究もじゅらいは「終身雇用」を前提とし、組織が社員のキャリアを管理、コントロールするという視点での組織内キャリア研究が中心だった。

・新しいキャリア概念の研究は1990年半ばごろから提唱され始める。

エンプロイアビリティ(Kanter,Waterman)

バウンダリレス・キャリア(Authur)

プロティアン・キャリア(Hall)

キャリア自律(Waterman,花田)

・組織内の職業キャリアに焦点を当て「キャリア自律」をキーワードにして、以下の3つを実証的に検証した。

*キャリア自律の心理的側面(意識やマインド)と行動側面の両方に焦点をあて、キャリア自律の構成要因を明らかにする。

*キャリア自律が組織と社員自身に与える影響を検証→組織に貢献しようとする意識(組織コミットメント)や人生全般に対するポジティブな心理的機能を持てるか(心理的well-being)

*キャリア自律がどのような要因とプロセスにより促進されるかを探索的に明らかにする。

・研究を進めるうえで調査対象は、講師の人的ネットワークを通じて調査依頼した民間企業に勤務する人。主に大企業でグローバルに展開しているような企業が対象。

・研究内容詳細に関してはここでは割愛します。

<本研究の結果>

・本研究の結果、上記した3つの実証的検証ができ、キャリア自律の統合モデルが提示された。

*社員のキャリア自律が、多様な仕事経験・学び、上司や社内外の人間関係からの支援によって促進されることがわかった。

*キャリア自律が、組織と社員の双方にメリットがあることが実証的に検証された。

→これにより企業が社員のキャリア自律を支援をすることのメリットを示すことができた。→「キャリア支援によって優秀な社員がやめてしまうのでは?」などといった会社側マイナスイメージを払拭できるだけの数値的結果を得た。

 

◆感想:

・全体的にとてもわかりやすい説明で、内容がすっと耳に入ってきて聞き入ってしまった講義だった。

・自分の置かれている環境に近いところでの活用を前提とした研究だったので、とても共感できたし、この研究結果をヒントにして今後の社内でのキャリア形成と個人のキャリア自律というのを考えていけたらいいと思った。

・講義の中で資格取得のときに勉強した理論がたくさん出てきて、懐かしかった!(たぶん懐かしい思いにかられたらダメなんだと思うけど)。ちょっと忘れかけている部分が正直あるので、改めて復習は必要だと思った。

・この研究を実践に応用することを想定したときに、講師の先生が述べていた「上司のキャリア形成支援の役割の再確認とその強化が重要」という部分には激しく共感。上司の世代はキャリア形成過程がいまの若い年代と異なる のだから、それを理解し、自分がやらなければいけない役割と支援方法をもっと勉強してほしい。また、会社(組織)は若い年代にだけ、自分のキャリアを考えなさいという支援方法だけをとるのではなく、育てる側(つまり上司など年長者)側がもっとキャリア育成方法などを勉強できるような機会を積極的に設けるべきであると思った。

 

全体を通じて

・この2つの講義をきいてみて、聴講者同士が簡単に感想を述べ合うという時間があったのだが、聴く側の立場によって、着目点や、気になるところが違うため、これもまた非常に勉強になり、たくさんの気づきを得ました。

・就職支援をしている人の立場だと、「若者がそもそも仕事につけない」という現状を目の当たりにすることがあり、「キャリア自律」といわれても、仕事経験からの学びを得ることができる環境にも到達できないことがあるのだという切実な悩みがあることがわかりました。

・離婚問題やDVに悩む人の支援やカウンセリングをしている人の立場からみた場合、今回の研究結果の実証検討で「キャリア自律」に影響すると結論づいた要因がキャリア的な「自律」だけでなく、人間的な「自律」をするうえでも近いものがあるのではと感じたようだ。特に『私(自分)』というものがはっきりしていないと何事も主体的に取り組めずに、「自律」できないということなのかもしれないといっていたことが印象的だった。

・キャリアカウンセラー自身も「キャリア自律」が必要という話がでた。

・この講座の感想を代表で述べていた方のコメントが面白かったので、ネットで調べてみた。同じ話が載っていたので、メモとしてリンクシェア。(興味ある方は以下URLの中で紹介されている『「本当の「気力」の理解のために」:自論です!』」を見てみてください。)

代表ブログ - 介護支援の人材育成・経営コンサルなら株式会社ラーニング・ロード

・聴講者の意見から、学生を対象とした就職支援を想定したときに心に留めておきたいと思うような気づきもありました。学生は就職するとき「ここで自分というものを決めないといけないんだ!」という風に思って身構えがち。でも、実際は社会人になってもずっと悩み続けているわけです。「本当に自分のやりたいことはこれでよかったのか?」「どんな風に自分を変化させていけばいのだろうか?」などなど。自主的な変化もあれば、偶発的な変化。そういったものを許容していかなければならず、悩みはつきません。今回ご紹介いただいた研究の結果や過程もうまく生かして、社会人がどう悩み続けているのか、というのを学生に伝えてあげることで、「ここで決めきらなくていいのか!」という気づきを学生側にあたえられることもできるのではないかということです。そうすることで、就職活動を身構えすぎることなく、有意義な就職活動を進めることができるようになるのではないかと思いました。

・最後に、キャリアカウンセラーの立場でこうした勉強会に参加することはやっぱり面白いと改めて思いました。学び始めたときもそうでしたが、男女関係なく、ほんとうに幅広い世代がいて、もちろん業種も立場も経験も、ここまで多種多様な方々と接することができるというのが魅力です。私自身もまだまだ若輩者なので、自分自身のキャリア自律を考えつつ、世代を超えた多くの方のを、さまざまな形で支援できるように勉強を続けたいと思います。

*1:employability:雇用される力