DREAM WORKPLACEを読んで
今回読んだ本はこちら
DREAM WORKPLACE 〜 誰もが「最高の自分」になれる組織をつくる
著者:ロヴ・ゴーフィー|ガレス・ジョーンズ
訳者:森 由美子
この本を読んだ理由とざっくりとした感想
Why Should Anyone Work Here?
なぜあなたはここで働かなければならないのか?
というのがこの本の原作のタイトル。
この言葉はまさに私がこの5年間、繰り返し自分自身に問い続けてきた言葉でした。
「なぜ私はここで働くのか?」「私がここで働く意義とは何なのか?」
また、邦題のタイトルである
DREAM WORKPLACE 〜 誰もが「最高の自分」になれる組織をつくる
というのも私自身がキャリアコンサルタントの資格を取得するきっかけになった『「個人」と「組織」の関係とそのもっともよいあり方とは?』といった私自身が持つ疑問にもつながるため、読んでみました。
結論からいうと、今の私にもっとも必要な本でした。
ここのところ忙しくてなかなか本読む時間がとれなかったのですが、この本は外出の移動時間やちょっとした合間でも読み進めたくなるようなことがたくさんかかれており、あっという間に読み終えることができました。
長いこと、自分の描く理想に向かう上で自分自身の気持ち・モチベーションの維持というのが大きな課題・壁だったのですが、その壁をすっと超えることができた気がします。
この本を読み終えたときに窓の外から見えた空が本当に青く澄んでいたこともあり、かなり清々しい気分でした。
書評のようなもの
この本は「組織カルチャー」と「リーダーシップ」の2つの主なテーマについて、ほぼ30年にわたって研究を重ねてきた2名が筆者です。
筆者が実務上と研究上の両方の目的で多くの組織との関与を続けるなかで、出てきた疑問がこうした活動の原動力になっていて、その疑問をもとに論文や本として出すというスタイルを取っているようです。
この本を書くきっかけになったのは著者が何人かの企業幹部と話をしているときに「本物の組織で働いていると実感できれば、私達も本物のリーダーとしての行動を取る」という言葉を聞いた瞬間に「なぜここで働かなければならないのか?」という疑問に取り組まざるを得なくなり、この執筆に至ったということが謝辞に記載されています。
この本には私自身が直感的に実践してきたことが間違っていなかったと思わせてくれることがたくさん書いてあり、このまま頑張っていっていいのだなという勇気をもらうことができました。
また、同時に、理想を高く持つがゆえにありがちな、「なぜみんなわかっているのにそうならないのだ!」といったようなイライラ・怒りの類や、「それは正論だけどさ、実際は…」とか「大人の事情っていうのがあるんだよ」ということを色んな人に言われるたびに感じてきた幻滅・悔しさのような類の感情に対しての処方箋がたくさん記載されていました。
特にこの本で重要なキーワードは繰り返し記載されている「本物(Authentic)」という言葉ではないかと思います。
本物の組織とは?本物のリーダーとは?そもそも「本物であること」とはなんなのか?といった「あるべき姿(=理想)」を記載するだけでなく、その「本物であること」つまり「理想を現実にすること」がいかに難しいのか?なぜそうならないのか?といった理由、そして、そうした「できない理由」を言い訳にせず、立ち向かう方法を教えてくれています。
この本はいまの組織に不満を感じている人はもちろんのこと、世代やポジションによらずより多くの「組織の中で生きる人」に読んでほしいです。
組織の中でのポジション、役職なんて関係ない。決してリーダーのポジションについてたり、それを目指す人のためだけの本ではありません。むしろ、自分の座る位置(ポジション)がどこであろうとも、組織そしていまの職場をより良くしようと努力する人のための本であることは間違いなく、筆者も序章でそのように語っています。
組織をつくっているのは他の誰でもない自分自身であり、「自分の描く理想の職場」をつくるのもまた自分自身であるということを改めて感じさせてくれます。
もしかすると部分的にはやや読みにくいと感じる人もいるかもしれません。
私が苦手なだけかもしれませんが、出て来る例え話がほぼ海外の出来事や会社なので、もともと海外のビジネスに関心の高い方であれば特に気にならないかもしれませんが、ぱっと会社の名前や記載されている出来事で、「あれか」と頭に思い浮かぶものがそんなに多くはなかったので、例え話のイメージがつかみにくいところも多少あると思います。
ただ、そうした例え話がなくても、自分自身の働いてきた職場でもそういったシーンは数多くあるため、その部分はぐっとこらえて読んでいけば、有用な情報は得られるのではないかとおもいます。
本書の内容より、気づきがあった点についていくつかのポイントを紹介
夢の職場の「夢(DREAMS)」の原則
筆者の研究調査の中で4年以上世界中の人々に、『「理想の組織」、「最高の自分になれる組織」とはどんなものであるか』と問い続けるなかで、回答が大きく6つの原則に分類されることがわかったという。
その6つの原則の頭文字をとったものが「DREAMS」
- Difference(違い)
ありのままでいられる場所、他社とは違う自分のあり方や物の見方を表現できる場所で働きたい - Radical honesty(徹底的に正直であること)
今実際に起こっていることを知りたい - Extra value(特別な価値)
私の強みを大きく伸ばしてくれて、私自身と私個人の成長に特別な価値を付加してくれる組織で働きたい - Authenticity(本物であること)
誇りに思える組織、良いと思えることを本当に支持しているような組織で働きたい - Meaning(意義)
毎日の仕事を意義あるものにしたい - Simple rules(シンプルなルール)
バカげたルールや、一部の人にだけ適用されて他の人にはあてはまらないようなルールに邪魔されたくない
この本はこの6つの原則をそれぞれ軸にした各章とそれらすべてを実践する上での注意書きの章でなりたっています。
私自身も社内で(大企業なのでまずは自分の所属する部署に限定されてはいるものの)、Diversityにむけた自主的な活動を行っていて、その活動のメンバーと、活動をするにあたっての目標としたものがまさに「理想の職場づくり」でした。
そもそも「理想の職場とはなにか?」ということをメンバー中でも議論をした中で、完全にうまく表現しきれていなかった部分があった気がしていて、このDREAMSの分類を参考にするとうまくハマるものがありそうだとおもいました。
Diversityの活動ということもあり、いまのところまだこのDREAMSの中では「D:Difference」の部分にしか着目、取り組みできていなかったのだなぁというのもわかり、まだまだ道のりが長いことも同時に実感できました。
もちろんこの自主的な活動のなかだけでなく、私自身の実務の中で取り組んでいることも多くあり、そちらのほうは意外と直感的にDREAMSの全体のバランス を日々考えて取り組めているかもしれないなと思うと同時に、やはり「個人」の思いそして役割や取り組みの域を超えた「組織」としての取り組みとしてこの 「DREAMS」すべてを目指していくことの難しさを感じました。
筆者が序章で、
本書に挙げた組織の中でこの最高の状態(世界で最高 の 職場)に完全に達したところはひとつもない。(中略)彼らは理想をかなえようと努力と試行を絶えず続けている。その姿から多くの示唆を得られるだろう
と記載しているとおり、この本の邦題である「DREAM WORK PLACE〜誰もが「最高の自分」になれる組織」を実現するのは容易なことではないということが繰り返しこの本の中には記載されています。
むしろ、この本を読んだ今、この最高の状態に達することは不可能なのかもしれないという気にもなってしまいました。
ただ、悲観的な意味ではなく、時は進み、時代が移り変わる中で、その「理想」は変化していくでしょうし、つまり求められる「組織のあり方」が変わっていくわけで、常に変化していくなかでは、最高の状態に達したとおもっても、すぐにその絶え間ない変化に追従し続ける必要があるわけで…
結局はその「変化にいかに追従できる組織であるか?」が重要なポイントになるのかなと思いました。(よく考えてみたら自主的なDiversityの活動の中でも、メンバーとそういった話になったなぁと思い出しました)
本物とは何か?
筆者は
DREAMSの原則を実践することは、企業の従来の組織慣行に逆らうことが多いため、簡単でもシンプルでもない。両立が難しいものもいくつもある。
ということも述べています。また、
組織にとって「本物であること」という「本物」とはこの夢(DREAMS)の原則「すべて」を貫く概念である
とも述べていて、
「本物であること」をより具体的に理解するための指標は以下3つ
1.企業のアイデンティティが一貫してその歴史に根ざしている
2.社員が、企業が支持する価値観を行動で示している
3.企業のリーダー自身が本物である
この3つの状態を揃えることであり、この達成が簡単でないことは明らかだ
と述べています。
この3つの指標の中で、改めてやっぱりこれだよなとおもったのが1でして、まさに「その企業らしさ(アイデンティティ)」があるかどうかがまずは組織としては非常に重要であるのと同時に、それがその「歴史」に根ざしているかどうかが本当に大事なのだと思います。
この部分の大切さについてはこの本では 第4章:「本物」を支持する にしっかりと記載されているので、詳細はそちらを確認していただければと思いますが、 ミッションステートメントだけでは「本物の」組織はつくれず、スタートアップであろうが、伝統的な大企業であろうが、そのアイデンティティそしてルーツが なければ組織として全く魅力のあるものにはならないということが書かれています。
オックスフォード英語辞典では「authenticity(本物であること)」を「その起源に議論の余地もないこと」と定義している。
あなたが属する組織にはアイデンティティを定めるようなルーツがあるだろうか?
間違いなくこの問いに対しては「ルーツはある」と即答できるものの、この章を読み進めるに従って、次の指標である上記の2、「価値観へのこだわり」がある、という部分から、むむむ…と考え始めてしまいました。
そうした組織(本物の組織)は、バリューステートメント(価値声明)に並べられた言葉を超えるカルチャーを育てている。(中略)実際、ブランドとは、外部に向けたカルチャーの公約でもある。
この記述の後に、BMWが例としてあげられています。自分の組織と同業他社というくくりに入る組織であるBMWが、徹底して自分たちの「こだわり」を持っている代表例として本書に書かれていることで、改めて自分の働く組織の「ルーツ」や「ブランド」についてもっと十分に考えるべきであるという強い気持ちになりました。
本書にはこれ以外にもかなりたくさんの学びになる内容が含まれていました。
特にキャリアコンサルタントとしては外せない「個人の強みを理解した上でのスキルの強化」といった内容や、「仕事の意義」について記述されている章もあります。
今回は紹介しきれませんでしたが、こういった内容についてはまた別の機会に触れたいと思います。
まとめ
いろいろと考えた上で、今のところの結論としては、私自身がいまの会社で実現したいことは「夢や想いをもった人々が自由にチャレンジした結果、その夢や思いが製品やサービスとなって世の中に出ていき、それがまた次の誰かの夢の原動力になるという企業アイデンティティを忠実に実行できる組織にすること」であり、それがまた「私自身がなぜここで働くのか?」の答えの1つなのだと思いました。
大きな組織で知名度やブランドがあるからこそできることはあるとおもうのですが、大きいがゆえにそれを実行するのにとにかく時間が必要で無意味だとおもうような出来事もたくさんあるのもまた事実です。
この本を読んでいる途中で、入社した直後、いろいろと教えていただいた先輩に「君の考え方は大企業には合わない、君の想いを実現したいのであればスタートアップとかそういうところにいかないとダメだよ」と言われたのを思い出しました。
そしてその後も多くの人に「組織は簡単には変われない」「それをここで実現するのは難しい」と言われてきました。
それでも私がいまの会社を辞めないでここまで来たのは、「今の会社の歴史、アイデンティティに忠実に従えば、自分の想いを実現することは不可能ではないし、その土壌がここにはある」とどこかで信じてきたからで、その想いを汲み取って助けてくれる人がどこかに必ずいたことで、またその想いを強くすることができてきたからなのだとおもいます。
社会人になってからは自分の1日のかなりの時間を会社で過ごすわけで、せっかくなら楽しく、自分らしく過ごせる時間をみんなに過ごしてほしい。
一人ひとりの力だけでは限界を感じてしまうことも、よい組織のなかで力をあわせることで1+1が単純な2ではなく、それ以上にすることができる。
そんな組織で自分は働きたいし、そういう組織をつくりたい。
自分の組織内でのポジションはそんなに高くないですが、だからといって不満だけををいって誰かにやってもらうことを期待するのではなく、そうしたいなら自分自身がそういう組織をつくる一人として、着実に行動していくことをモットーにここまできたので、この本に教えてもらったことを活かしながら、これからも変わらずに頑張りたいと思います。